桜吹雪のヤマメ釣り(東海渓流釣行記)
日時: 201016日(金曜日)~18日(日曜日)
場所: 江原道、日本海(東海)側の河川
参加者: ウォンバット、ジョーさん(非会員)

 

以前からやってみたかった釣り、それは韓国のヤマメ釣りだ。 釣友のジョーさんから、「韓国のヤマメはいいですよ!」といつも聞かされてきた。 今回は彼から誘われて、かなり早い段階から準備を進めてきた。 横浜のサンスイに出掛け、ヤマメ用のルアーを仕込み、情報を仕入れてジョーさんと二人、金曜日の夜からの釣行。 この週は大好きな済州島のヒラマサ釣行の日でもあったが、1mのヒラマサよりも30センチのヤマメに気がはやる。 自分の釣りバカも年季が入ってきた・・・・・

 

16日のPM6:30にジョーさんの車で仁寺洞出発! 目指すは東海に面した小さな川。 大くくりな地名としては江原道(カンウォンド)だ。 韓国の地形は東の日本海(東海)側に南北に山脈が連なり、そこから東に向かって小さな川が何本も注いでいる。 今回の最初の目的地はその中の大白山(テベクサン)系から流れ出す川でヤマメ、そして次に大きく北に転じて38度線を越え、雪岳山(ソラクサン)のふもとを流れる川で、ヤマメ、運がよければサクラマスを狙おう、と言うことになった。

 

韓国は今、地方に伸びる高速道路が急速に整備されている。 ソウルから日本海(日本人なのでこの表記を使いたい)側に出るのには昔ならバスで7時間も掛かったそうだが、現在なら自家用車を駆って3時間あまりで着いてしまう。 今回も第一目的地の大白山のふもとの小さな町に着いたのは10時半前後。 小奇麗なモーテルもあり、コンビニで酒を買って快適に初日の眠りに付いた。 

 

翌日は5時起床。 モーテルを出るとそこは河口で、遠くかすかに波の音が・・・。 ここから20分も車で遡れば、そこはもうヤマメの天国だ、というのだから応えられない。 日本で波の音を聞きながらの渓流釣りは青森が有名だが、韓国の東側にはまだこのような釣り場が数多く残っているようだ。

 

途中の道端には桜の並木が満開! 日本と比べて2週間ほど遅れている。 今年は韓国も冬が厳しく、雪が結構降ったのでヤマメも雪代を浴びてまだサビて居るのではないか、とちょっと心配する。 

川へ向かう途中にはコンクリートの製造現場が。 ジョーさんによるとこの水域は石灰質の地質を流れる、いわゆる「チョークストリーム」だそうで、その養分のおかげで川虫の湧きも良く、型の良いヤマメが釣れるのだそうだ。道理で途中、鍾乳洞のような洞窟の観光地がいくつか見える。

 

車で20分も走った橋の袂に駐車して、釣り開始は6時半。 すでにあたりは完全に明るく、もうすぐ谷にも朝日が差し込む寸前の最高の時間帯。

川は谷が大きく開けて歩きやすいが、フラットな渓相でも200m位毎に瀬と淵が展開する絶好の渓相である。 道路も川に沿って走るこんな川は、日本ならすぐに釣り人で埋まってしまうだろう。

 

なんと!第一投から、ジョーさんが流心からヤマメを引き出す。 型の良い幅広ヤマメ。 4月中旬とは思えない最高のコンディションだ。 雪代のサビなどどこにもない、ひれのピンッと伸びた天然のヤマメに二人して惚れ惚れと覗き込む。                                                                                                                                                   

その後更にジョーさんに2匹目! さすがに初めての自分は分が悪い。

これはかすかに銀毛化(スモルト)している、と言っていた。

 

言い忘れたが本日の釣行は、5センチのミノーを主体にしたルアー釣り。

ウルトラライトのロッドに、相変わらずお互いこだわりのオールドリール。

自分はミッチェル309、ジョーさんはABUカージナルの極小で釣り上る。

 

ジョーさんによると、同じフィーディングレーンに付いたヤマメでも、メイフライやカディスだけを捕食しているものと、フィッシュイーターとにはっきり分かれるのだそうだ。 そして大物は決まってフィッシュイーターの方なんだとか・・・・・

こんな開けた川、しかも随所にメイフライのハッチが見えるこんな日は、フライフィッシャーにとっては垂涎の的なんだろうが、大物の欲しい我々二人はひたすらミノーを投げ続ける。 ただし自分はある程度釣ったらフライに代わろう、と欲の深いことを考えている・・・・・  ラインは4ポンド。

 

上流に移り、2本の川の合流する瀬から淵への肩で、自分のミノーの後ろがギラリと光る。 あたり! 水流に乗った魚は中々重い。うれしい重量感を伴ってあがって来たのは26センチほどの幅広の本当に美しいヤマメ。 

韓国の初物の到来にただただ感動を覚える。

川には大型のメイフライが乱舞し、石の上にはいくつものカディスの脱皮した抜け殻が・・・本当に豊穣な川で育ったヤマメの姿。

日本ではよほど良いコンディションでなければお目に掛かれない。

 

しばらく行くと、川幅の狭まった急流がボリュームを伴って、深く大きな淵へと変わる青々とした絶好のポイントが。 ここでジョーさんがモンスターを掛ける!

40センチ! 小型のサクラマスを彷彿とするでっぷりと太った魚体! 川の宝石である。 今までつれた2030センチのそれも、幅広の美しい姿だったが、この怪物を見て一挙に縮んでしまったような感じを受ける。 それほどこの魚はインパクトがあった。 ジョーさんの記録は43センチだそうだが、とにかくおめでとう!! めったに釣れない逸物であることは変わりない。

 

この淵はこれで終わらなかった。 急流にミノーを乗せて淵まで流し込み、細かなトゥィッチングを効かせると、中型の生きの良いヤマメがぎらっと光る。 二人で1時間で10は軽く上げただろう。 バラした数も加えると20近くか? 昔、「釣りキチ三平」という漫画でこんな風景が出てくると、現実にはあり得ないシーン、と思ってしまったものだが、今我々の目の前にある光景はまさにそんな川なのだ。

11時まで釣って、自分が7匹、ジョーさんも楽に10匹は釣ったようだ。 

もうこのまま帰っても良いほど満足したが、釣行はまだ始まったばかり。

 

ただしこの後はあまり良くなかった。 山家の美味しいおそばを手繰ってから、元の釣り場に帰ってみると、川は先ほどの青く澄んだ流れから一転、泥濁りで真っ赤に染まった水に変わっていた。 上流の橋梁工事で、土砂が川に流れ出したようだ。

食事の後はフライで、と思っていた自分の思惑が見事に外れる。

 

午後は予定通り2時間掛けて北上し、海沿いに雪岳山(ソラクサン)のふもとの町、ソクチョに入る。 マツタケで有名な町、とかで、奇怪なマツタケの人形が街のいたるところに配置されている。

 

今夜のモーテルの予約をしてから、やはり20分ほど川を遡って釣り場に入る。 この川は鮭の上る川で、秋にはすごい光景が見られるのだそうだ。

明日はこの河口でサクラマスを試して見よう、という計画である。

 

こちらの川はチョークストリームではなく、フライの湧きもなくて、午前とは打って変わった寂しさだった。 ジョーさんが一つ。 それもすっきりと痩せていて、日本で見る標準形のヤマメの姿をやっと思い出した。それほど午前中の川はすごかったのだ!4時半納竿。

 

翌朝は6時に起き、7時から2時間ほど河口に近いところで10グラムのスプーンやミノー主体にサクラマスを狙って見た。 ざぶざぶと入る川の水はまだ冷たく、小魚の群れや虫の湧きなど、生体反応が一切見られない。

水が澄んでいる分だけ余計、何もない死の川に見える。

サクラマス、とは桜の頃に遡上する習性を指して言ったのではなかったか?

地上と水面下の気候の移り変わりは必ずしもぴたりと一致するものではないらしい・・・・

 

今回の釣りは初日の釣り始め、3時間でほぼ勝負が付いたようだ。 その後は釣れてもつれなくても一向に豊かな気分が変わらない。 とても良い気持ちなのだ。 それくらいスタートのあの川は我々に夢を見させてくれた。

 

本日の釣りは2時間で終えて、雪岳山のふもとの町、ソクチョとヤンヤンを観光する。 ソクチョの豆腐料理や干物がびっくりするほど美味しいのに感激! イギリスでもそうだったが、韓国も都市部より田舎のほうがうまい物が残っているのかもしれない。

ヤンヤンの市場を観光する。 北の海の幸が一杯で、さっきまで我々の狙っていたサクラマスが、ぞろりと並べられて売られている。 ジョーさんがその中のひときわ立派な奴を買う。 なんとたった13000Won(約1100円)!! 海獲りのもので、やはり遡上にはまだ間があるのだそうな。

さばいた腹のサーモンピンクがひときわあざやかな大物だった。 僕も欲しかったが単身のアパート暮らしでは如何ともし難い。

帰りは観光も兼ねて雪岳山の尾根を縫って走る山岳道路を通って帰る。

山の頂上に近い、分水嶺に位置するドライブインで取ったのがこの写真。

峻険な岩山は、頂上から尾根に掛けてなんとも不思議なシルエットを作っている。

中国の山水画を彷彿とさせる。

僕の後ろが東に注ぐ方向で、こちらはヤマメの宝庫。

僕の前は西でソウルへと続く。

こちらはレノックの宝庫でヤマメはあまりいないのだそうだ。

 

今回も韓国の豊かな内水面の釣りを満喫した。 

誘ってくれたジョーさんに本当に謝である。 

異国での釣り、まだまだやめられない・・・・・

 

(終わり)